航空身体検査

【パイロット】航空身体検査 視機能編

こんにちは!エアラインラボ編集部です!
この度、AirlineLab公式HPを立ち上げましたので、どうぞ宜しくお願い致します。

エアラインラボには、大手航空会社自社養成パイロットの内定者や現役航空大生も在籍しておりますので、彼らの知見を集結させ、信憑性のある情報を発信していこうと考えております。

また、我々は医学的知見を有しておりませんので、あくまで個人・エアラインラボの見解として受け止めていただければと思います。

はじめに

 

航空身体検査の項目の中でもっとも検査内容の多いのは視機能検査です。

単純に視力が良いだけで受かるとは限りませんが、事前の情報収集や準備で十分に対策の打てる分野でもあります。

先天性でどうにも出来ない分野も存在しますが、自助努力できる範囲はしっかりと対策して備えておきましょう。

 

今回はまず【全体的な対策方法】から

  • 「視力」が悪くなる原因と
  • 改善方法

について書きます。

 

その後【各検査内容】の

  • 基準
  • 不適合状態

について説明します。

 

なぜ「視力」は悪くなるのか?

 

「PCやスマホを長時間使う=視力が低下する」
というわけではありません。

実は、視力低下の原因は「同じ距離感で物体を見続けること」だと言われています。
「PC やスマホを長時間使うこと=視力の低下」とは一概に言えないのですね。

 

長時間「見る」ではなく「見続ける」ことに問題があります

 

眼精疲労の蓄積度が多いほど視力は低下するので、視力低下の原因は生活習慣と大いに関係があります。

例えば...

  • 机に向かって読み書きをする際、机やいすの高さが合っていない

(モノを見るために自然と身体が前のめりになるので、モノと目の距離が近くなる。近くで見るという事は目の周りの筋肉が緊張するため、眼精疲労を感じやすくなる。)

  • 暗いところで作業をする

(暗い場所は明るいところよりもピントが合いにくいため、より目を酷使することになって、眼精疲労を招く。)

これらは全て眼精疲労の蓄積に繋がるでしょう。

視力低下を防止する方法

適度な休憩を挟む

長時間近い距離で物事を見続けることが眼精疲労に繋がります。1時間に1回は眼球のストレッチ運動などをして目を休ませてあげましょう。

オススメのストレッチ方法はこちらです。

   https://www.youtube.com/watch?v=TrizfI5iTTE

 

目を休ませる時なるべく遠くを見る

遠くを見ることで目の緊張状態が解れると言われています。
見ているだけで安心と安らぎを与えてくれる緑の物体(木や山など)を見るとより効果的ですよ。

 

ブルーライトカット対策をする

ブルーライトは私たちがみる光の中でもっとも波長が短くエネルギーが強いと言われています。

 

また、夜に浴びると体内時計に悪影響が出るということが証明されています。
寝る前にスマホは極力控えましょう。

 

検査内容

 

遠見視力

「視力検査」と思い浮かべるとまず一番に出てくる検査ですね。
黒い丸(ランドルと環)の空いてる方向を答えるお馴染みの検査です。

 

基準

次のイ又はロに該当すること。ただし、ロの基準については、航空業務を行うに当たり、常用眼鏡(航空業務を行うに当たり常用する矯正眼鏡をいう。)を使用し、かつ、予備の眼鏡を携帯することを航空身体検査証明に付す条件とする者に限る。


各眼が裸眼で0.7以上及び両眼で1.0以上の遠見視力を有すること。


各眼について、各レンズの屈折度が(±)8ジオプトリーを超えない範囲の常用眼鏡により0.7以上、かつ、両眼で1.0以上に矯正することができること。

視力判定基準は、5個以上の指標に対してその正答率が60%以上であることとする。

 

不適合状態

上記基準を満たさないもの

2-2
オルソケラトロジーによる矯正

2-3
屈折矯正手術の既往歴のあるもの

 

中距離視力

遠見視力の距離が少し短くなったバージョンです。
特に検査時のコツもないのでリラックスして受けることをオススメします。

適合基準

裸眼又は自己の矯正眼鏡の使用により各眼が80cmの視距離で、近見視力表(30cm視力用)により0.2以上の視標を判読できること。

 

不適合状態

視力判定基準は、5個以上の視標に対してその正答率が60%を下回った時

 

近見視力

かなり近い距離で検査をします。
見えない物体も少なからず一つはあるかと思いますので、全問正解する必要はないのでここもリラックスして受けましょう。

 

検査内容

裸眼又は自己の矯正眼鏡の使用により各眼が30cmから50cmまでの間の任意の視距離で近見視力表(30cm視力用)の0.5以上の視標を判読できること。

 

不適合状態

視力判定基準は、5個以上の視標に対してその正答率が60%を下回った時

1~3 の検査は上記の視力低下の対策で十分ですので、日頃のケアを怠らなければクリアできるでしょう。

 

またそれぞれの検査は全部正解する必要はありません。
60%以上の正答率でPassできるようです。

それぞれの検査で2〜3つまでは間違えてもOKだと考えておきましょう。

両眼視機能

この検査では深視力検査を行います。
ここが一番神経を使う検査であり、対策は必須です。
(ここの検査で涙する人が数多くいます)

まずは以下の動画を参考にしてください。

 

https://www.youtube.com/watch?v=XC97U25kHgI&t=35s

 

この検査でのコツは動画でも解説の通り、真ん中の棒と左右の棒どちらかの棒だけを見ることです。

※左右両方の棒を見ると奥行きが見分けづらくなります。

まずは実際にお試しで検査する事をオススメします。(眼鏡屋さんによっては無料でお試しできる場所もあります!)

 

不適合状態

斜視

不同視を呈するもの

輻湊・開散運動に異常が認められるもの

 

深視力検査の場合、5回平均値が20mm以内で適合となっています。

例えば4回連続で基準値に入っていたとしても、5回目に基準値を大幅に超えて平均値が20mm以内だとOutです。(一発Outは無いとは思いますが)

検査の最後まで気は抜かないようにしましょう。

 

不適合のものとして斜視が挙げられています。
頻繁にスマホを使う方、気をつけましょう。

スマホ斜視が現代の若者の間で深刻な問題となっています。
スマホを長時間見ることで、急性内斜視になる恐れがあるようです。

 

 

内斜視を含め外斜視は眼球運動の検査にも影響を及ぼします。

 

  • スマホを見るときは30cm以上話す
  • 斜めに見ない
  • 疲れ目を感じたら寝る前に蒸しタオルで保温する

上記3点を意識するとリスクヘッジが期待できるでしょう。

両目のバランスを整えるトレーニング方法

ブロックストリングスというトレーニングを用いると効果的です。

道具を使ってトレーニングをするのですが、専用の検査道具を購入する必要はありません。身の回りの物で簡単に作成できます。

 

【用意するもの】
ビーズ玉(ボタンでも可)
紐(ボタンの穴に入るもので)

【作成方法】
①紐を2mほどの長さでカット
②先端から15cm , 40cm , 80cm の所にボタンを固定させるように結ぶ

 

完成図は以下のようになります。

「ブロックストリングス」の画像検索結果

【トレーニング方法】
手前→真ん中→奥のボタンを順番に焦点を当てて見るようにしましょう。

すると、焦点を当てていないボタンは二つに見えるはずです。
(イメージは以下の通り)

「ブロックストリングス」の画像検索結果

 

視野

 

この検査はゴールドマン視野計という機械を用いて検査をします。

目を一点に集中させて、外側からくる光の点が見えた瞬間にスイッチを押すという単純な検査なのですが、集中してかなり疲れます(笑)

 

また、真ん中の一点に集中させないといけないので光につられて目が動くと怒られます(笑)
気をつけましょう!

 

航空業務に支障を来すおそれのある視野の異常がないこと

 

眼球運動

定規のような物を目の前に当てられて検査します。
検査時には特に意識する事もないのでリラックスして望めばいいでしょう。

 

検査内容

 

プリズム

視診により8方向(内、外、上、下、斜上内、斜上外、斜下内、斜下外)

航空業務に支障を来すおそれのある眼球運動の異常がないこと。

 

不適合状態

 

複視

病的眼振

その他眼球運動に異常のあるもの。

 

不適合状態に複視とありますが、先ほど述べたスマホ斜視も原因の一つです。
日頃近距離の物体ばかりみている人は遠くの物体を見る習慣をつけておきましょう。

 

色覚

色の識別ができるかどうかを判別する検査ですね。

検査内容

石原式

図の中の数字がいくつに見えるかというシンプルな検査です

 

 

日本人男性の20人に1人、日本人女性の500人に1人が色覚異常と言われています。
特に男性の方が色覚異常者が多いんですよね。

 

しかも日常生活では何ら支障無く生活出来ているにも関わらず、この検査をして初めて色覚異常に気づく人が結構いらっしゃるようです。

 

色覚はそのほとんどが先天性(生まれつき)と言われていますが、具体的な治療方法も現段階ではありません。

 

しかし、石原式が出来ないからといって落ち込むのはまだ早い。
出来ない場合はパネルD-15という検査をします。

パネルD−15

 

 

左の青色の球だけ固定されていて、その他15個の球は取り外し可能です。

 

  1. 15個の球を一旦箱の外に出す
  2. 外に出したらシャッフルして,また箱の中に戻します

 

※この時、青→黄→赤のグラデーションになるように(外に出す前と同じ並び)で戻すようにします。

 

この攻略のコツは、左右を入れ替えたりして、グラデーションになっているかを確認しながら揃えていくことです。

 

写真では判別がつかないように思えますが、隣の球同士を左右入れ替えてみるとグラデーションに違和感があることに気づけるはずです。

 

青→黄→赤の大まかな流れは覚えておきましょうね。

 

パネルD-15はほとんどの眼科に置いているはずです。色覚に不安のある人は検査してみる事をオススメします。

 

不適合状態

 

石原色覚検査表で正常範囲と認められないもの

 

「石原式で」とありますが、石原式が出来なかったからと言って即Outではありません。
そうだとしたら、パネルD-15で検査する意味ないですもんね(笑)

 

色覚検査ではパネルD-15をPassできれば正常範囲として認められます。

 

  1. 最初は石原式
  2. つまづいた場合のみパネルD-15
  3. パネルD-15がPassすれば適合

 

という流れです。

 

繰り返しとなりますが、不安な人は試しで検査する事をオススメします。経験した事があるor無いではプレッシャーのかかり方も変わるはずなので。

 

まとめ

  1. 適度に目をマッサージしてあげる
  2. 普段の生活習慣の見直しや事前の対策で対処できる検査がほとんど
  3. とにかくスマホ・PCとの向き合い方には最新の注意を払う

航空身体検査の関門の一つとも言われる視機能をPassするためにも、自分の目は自分で大切にしましょう!